過去のひと言
2009年12月No.2 2010年にむけて
今は基本的に一人で仕事をしているわけですが、一人で仕事をしていると、仕事に終われて忙しいか、仕事を作るのに忙しいかのどちらかです。2009年は、不況にもかかわらず、お陰さまで前者の忙しさが8割くらいでした。というわけで、2009年は仕事に追われることが多かったために、これといった新しいことに取り組む時間はあまりありませんでした。
- 仕事上のビッグイベントと言えば4月の引越し。かねてから考えていたことでしたが、三軒茶屋にこじんまりとしたプライベートオフィスをオープンしました。オフィスというよりも、仕事場というか、作業場というか、イメージ的には、本の少ない教授室の雰囲気です。
- プライベートでは、何と言っても、次女の国際結婚。今、ペンシルベニア州の地方都市に住んでいますが、親の心配は絶えません。
もちろん、まったく新しい事に取り組まなかったという分けわけではありません。これは2010年にかけてのチャレンジになりますが、着手した新しいテーマは“クリエイティブ思考”です。
大まかに言えば、思考法は、“ロジカル思考(判断を求められる時に必要となる集束型〔Convergent〕 の思考法)”と“クリエイティブ思考(新しい発想を求められる時に必要となる分散型〔Divergent〕の思考法)”に分かれるのですが、この両方はと もに不可欠の車の両輪です。昨今、日本ではようやく、ロジカル思考の教育が盛んになってきました。しかし、もう一方のクリエイティブ思考に関してはさっぱ りです。文書ライティングに必要となるロジカル思考の育成を追及してきた私にとって、この状況は以前から気になっていました。2010年のチャレンジは、 この分野で何とか一歩を踏み出してみる事です。こうご期待。
2010年が皆様に取り、健康で、幸せな、チャレンジとブレークスルーの年でありますように。
2009年12月 JAL 整備不良につき
先月、映画「沈まぬ太陽」を見に行きました。なかなか面白かったですが、やはり、文庫本5巻分を一本の映画に押し込むというのは所詮無理がある気がしました。
「沈まぬ太陽」は約10年前の山崎豊子の小説です。一読して日本航空と分かる航空会社を題材に、会社を食い物にする政治家、経営者、御用組合の幹部、イエスマン社員たちの魑魅魍魎の世界、悪臭漂う腐敗と不正、そして、それに立ち向かう一人の正義感あふれる社員を描いています。
映画では「フィクションであり、実在する会社とは関係がない」とのテロップが流れました。しかし、小説では「多数の関係者を取材したもので、登場人物、各機関・組織なども事実に基づ き、小説的に再構築した」との解説があります。つまり、個々の内容は取材に基づいていると言っているわけです。もちろん、日航はこの取材に全面的に応じて いないそうですから、取材そのものにバイアスがかかっていることも想像できます。
読書がお好きで時間のある方は、ぜひ「沈まぬ太陽」の小説の方をお奨めします。その後に、ネットで検索すれば、小説の登場者が実在の誰をモデルにしているかなど、とても興味深い情報が満載で、小説が倍楽しめます・・・というか、倍、恐ろしくなります。
さて、小説がどれだけの真実を含んでいるかはさておき、経営コンサルタントとして現在の日航問題を見た場合、はっきり言って、なぜ法的手段をとらないのか まったく理解に苦しみます。まさにこうした事態ために作った民事再生法だと思うのですが・・・。時間がかかればかかるほど事態は悪化し、我々の税金が垂れ 流しになります。米国がすばやくGMにチャプター11(民事再生法)を適応したのと比べ、なぜ日本では出来ないのでしょうか?やはり、過去の大物政治家や省庁との関係が公になることを恐れているのでしょうか?「沈まぬ太陽」を読んだ後に、どうも今のJAL対策を見ていると、何か勘ぐりたくなります。
私 は、長いコンサルタント歴の中でも、このような政治がらみの企業のコンサルティングをやったことはありません。ただし、大企業の子会社(神戸)のコンサル ティングをやっている最中に、暴力団筋が経営に介入してきたことが一度だけあります。どうやら、その子会社の社長は本社の総務担当役員時代に、労務対策や 総会対策で、その筋との関係があったそうなのです。「沈まぬ太陽」を読んでいて、何か通じるものを感じてしまいました。
2009年11月No.2 オバマ大統領のノーベル賞
先日、友人と話しをしていて、オバマ大統領のノーベル賞が話題になりました。まだ大統領になったばかり、これといった業績もないのになぜ受賞できるのか?日本流に考えるとあり得ない話しですが、欧米的に考えると「あり得ないとは言えない」話しという気もします。
娘がアメリカの大学に留学中の話しですが、3 年が終わったときに成績優秀者として表彰されたことがあります。聞くところによると、卒業名簿に印がつくし、履歴書などにも書けるくらい価値あるものだと 言います。しかし、それだけのものであれば、卒業時に判定し表彰する方が公平ではないか、まだあと一年あるのだから早すぎるのではないかと言ったところ、 どうやら米国ではこの種の中途表彰というのはよくある話しだというのです。
つ まり、表彰には二つのタイプがあるという考えです。一つは、結果に対して表彰する「ご苦労様」タイプ。もう一つは、この調子でこれからも頑張れという、今 の頑張りを表彰する「励まし」タイプ。見方を考えれば、過去を重視した「ご苦労様」タイプと、将来を重視した「励まし」タイプです。もちろん、「ご苦労 様」タイプもその存在自体が「励まし」になる訳ですし、「励まし」タイプも今の頑張りに対する評価という意味では「ご苦労様」という意味もあります。この2つのタイプは必ずしも完全に別物というわけではありません。要は、意識の問題、目的の問題です。
はっきり言って、日本では、学校の表彰から文化勲章に至るまで、ほとんどの表彰が「ご苦労様」タイプではないかという気がします。そもそも日本では表彰というものが少なすぎます。
こんなこと、学校などでは簡単にできるはずです。私が校長ならば即実行です。表彰はすべて「励まし」タイプにします。表彰の機会そのものを増やします。とりわけ小学校では、卒業時の表彰よりも、学年ごとの表彰を増やし、大掛かりにします。当たり前の事ですが、3年生で表彰された子は4年生になればもっと頑張るはずだからです。3年で表彰にもれた子も、表彰の機会が増えれば色々の形で励ます事ができます。人生全体で見ると、3年生での表彰と卒業時の表彰の間には、少なくとも、「ご苦労さん」的な意味の違いはありません。
地 球にとって、とりわけ政治において、大切なのは過去ではなく未来です。オバマ大統領がノーベル賞をもらうことで、彼の意識、そして、彼の支持者や世界中の 人の意識が非核化や環境に向けて少しでも確実な一歩を踏み出すとすれば、ノーベル賞の意味は大きかったと言えるのではないでしょうか。そもそも、政治家の 過去の業績に対してノーベル賞を授与するなどそれこそ愚の骨頂に思えます。
前回の問題
100人がトーナメント形式でテニスの試合を行ないます。各試合は勝つか負けるかのみで、引き分けはありません。さて、優勝者を決定するまでに、幾つの試合が行なわれる事になるでしょう。(答えは過去の一言集にあります)
2009年11月No.1 クリエイティブ・シンキング#2
前回、以下の質問を出しました。(答えは過去の一言集にあります。)
最も難しいのは最後の問題でしょう。これは、問題1~3の考え方(過去の考え方)に足を引っ張られては答えが出ません。いかにして、過去の考えを断ち切るか、ゼロから発想できるか、これがクリエイティブ・シンキングのスタートポイントです。
もう一つ、新しい問題です。
100人がトーナメント形式でテニスの試合を行ないます。各試合は勝つか負けるかのみで、引き分けはありません。さて、優勝者を決定するまでに、幾つの試合が行なわれる事になるでしょう。(答えは次回)
前回の問題
ここに4つのマッチ箱があります。
① すべての箱が別の2つの箱と接するように、4つの箱を配置してください。
② 1つの箱が別の1つの箱と接し、1つの箱が別の2つの箱と接し、もう1つの箱も別の2つの箱と接し、さらに、1つの箱が別の3つの箱と接するように、4つの箱を配置してください。
③ すべての箱が別の3つの箱と接するように、4つの箱を配置してください。
④ すべての箱が別の1つの箱と接するように、4つの箱を配置してください。
新しい問題の答え
優勝者を決めるまでに幾つの試合が行なわれる事になるか?こう質問すると、多くの人は、“勝者”を意識します。ここでのコツは、この発想を切り替えて“敗 者”の視点から考える事です。つまり、一つの試合ごとに敗者が一人現われ、その人はその時点でトーナメントから姿を消す事になります。100人のトーナメ ントで一人の優勝者を決めるということは99人の敗者を決めるということです。したがって、必要な試合数は99試合になります。
2009年10月No.2 クリエイティブ・シンキング
最近、クリエイティブ・シンキングに凝っています。どのようにして既存の枠にとらわれない発想を促すかです。そこで問題。暇つぶしに、ぜひトライして下さい。
ここに、4つのマッチ箱があります。
問題1:
すべての箱が別の2つの箱と接するように、4つの箱を配置してください。
答え:
問題2: 1つの箱が別の1つの箱と接し、1つの箱が別の2つの箱と接し、もう1つの箱も別の2つの箱と接し、さらに、1つの箱が別の3つの箱と接するように、4つの箱を配置してください。
答え:
問題3: すべての箱が別の3つの箱と接するように、4つの箱を配置してください。
答え:
問題4: すべての箱が別の1つの箱と接するように、4つの箱を配置してください。
答え:
2009年10月No.1 ほどほどに
前回、こ のコラムで、バランスの話をしました。「そもそもバランスのある状態を保つという静的な考えそのものが現実的ではない。バランスを保つというのは、中庸の 状態ではなく、両極端への行ったり来たりの状況が上手く均衡している動的な状況ではないか。中庸という静的な考えそのものが非現実的であり、それを目指す のはおかしい」という考えです。
以前、P&G のCEOをしていたダーク・ヤーガー氏は、この“両極端”を、Divergence(分散・拡散)とConvergence(集束・集中)という言葉を 使って説明してくれました。彼は、どちらかといえば、Divergenceをボトムアップ、Convergenceをトップダウンという意味合いで使って いましたが、この、バランスを取るのが難しいと語りました。
ヤーガー氏と面談したのは十数年も前のことで、その時には、Divergence とConvergenceが上手く均衡した静的なバランス状況を理想像としてイメージしていました。しかし、今考えてみると、彼が言っていたのは、「直面 している環境や状況やテーマによってDivergenceやConvergenceの切り替えを行なわねばならない、その切り替えのタイミングを間違うと バランスを失う」ということだったような気がします。
ヤーガー氏は意思決定という観点から語ってくれましたが、これは、いろいろな事に当てはまります。例えば、人材。理想的な社員像というのは、理想的/平均的な社員が千人いる状況ではなく、多様な人材が千人いる状態でしょう。例えば、経費節減。ケチケチ経営で成功している経営者の多くは、一方で、新規開発などの分野に湯水のようにお金をつぎ込んでいます。
個 人の仕事や人生にもあてはまりそうです。そう、恐らくは、「何事にもほどほど」というのは愚の骨頂なのでしょう。そもそも「ほどほど」にやるというのはと ても難しい事です。私のように個人で仕事をしているとよく分かります。本音は「ほどほどに」仕事をしたいのですが、これはとても難しい。ほどほどに仕事を しようと思うと、あっと言う間に業績ダウンです。というわけで、目指すは“極端”です。ただし、両方の極端のバランスです。例えば、一生懸命に働き、そし て、一生懸命にサボる。・・・うーん。これは確かに難しい!
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