過去のひと言
2010年12月 ネットショップのイメージ
前回、エブリデー・ロープライス型の小売の場合には、つねに安値を提供する店だというイメージ作りにそれなりの投資と時間が必要になると言う話をした。ネット・ショッピングの場合には値段の比較が容易であるだけに、このイメージ作りはより重要である。
半 年前のこと、使っていたネットワーク型プリンターがそろそろ寿命を迎えたので買い換える事にした。そのプリンターには結構満足していたので、今度も同じエ プソンにしようと、まずはエプソンの新型機をネットで調べ購入機器のタイプを決めた。出たばかりの新型機である。オープン価格なので価格はバラバラだ。
ま ずエプソンの直販ネット価格を調べるとやはりそれなりの価格である(数万円)。次に、たまたまアスクルでオフィス用品を注文する予定があったので、その機 種の価格を調べたところ、何とエプソン直販価格と同じ価格だった。当然安いと思っていただけに若干裏切られた気分である。どうも安いのは文房具だけらし い。次に楽天を調べてみたが、新製品のせいか、それほど安い価格では出ていない。ただし、エプソン直販価格よりは数千円安かった。結局、その時点で、すぐ に手に入る価格でもっとも安かったのはアマゾンだった。直販価格より1万円近く安かった。後で、友人と話をしたのだが、電気製品に関しては、ある程度信頼ができ、安いのはアマゾンではないかということで意見が一致した。家電量販店と比べると、ポイント分だけ、アマゾンの方が安くなっている感じだ。
数ヶ月前に、地デジチューナーを買おうとメーカーB 社のHPで機種チェックし、アマゾンを覗いたところ、買おうとしていたB社製品が何と販売停止中だった。そこには、「顧客アンケートで深刻な問題が指摘さ れたために、その問題についてメーカーに問い合わせ中。この問題が解決するまで当該商品の販売は停止する」というコメントがあった。アマゾンの購入者評価 を見ると、その商品は評価5点満点中の4点を越す高評価の人気商品だったが、よく読むと、「使用後数ヶ月するとリモコンがおかしくなる」というコメントが 数件あった。これを読んでいたらとても買う気がおきないという内容である。アマゾンの担当者は読んでいたのだ。えらい!この一件で私のアマゾンに対する信 頼は更にアップ。今、電気製品のかなりはアマゾン経由で買っている。
た だし、アマゾンに対してこうしたイメージを私が持ったのは最近の話である。プライス・ショッパーが多いネットの世界でこうしたイメージを築き上げるのはも しかすると非バーチャルな世界よりもはるかに難しいことかもしれない。しかし同時に、いったんイメージを築き上げる事が出来れば、おそらくその効果は現実 の小売店と比べるとずっと大きな効果をもたらしてくれそうだ。
2010年11月 ハイ・ロー vs. エブリデー・ロー
スーパーなどの小売店は、ハイ・ロー型の小売店(目玉商品などを設け、価格にメリハリをつけて売る店)と エブリデー・ロープライス型の小売店(つねに最善の安値を提供する店)に分けることが出来る。昔、どちらのタイプが儲かるかという実験がシカゴ郊外のスー パーで行われた。ちなみにこうした実験は他の影響要因を排除しないと客観的な結果が得られないので、かなり難しい。
実 験の結果は「どちらとも言えない」ということで終わったそうだ。ハイ・ロー型の場合、目玉商品のチラシ広告などで客寄せが出来るのだが、エブリデー・ロー プライス型の場合、その店がエブリデー・ロープライスであるというイメージをしっかりと客に植え付ける必要がある。エブリデー・ロープライスの実現は勿論 のことだが、顧客に対するイメージ確立に予想以上の時間とコストがかかるということで、このコスト測定が難しかったようだ。
一 年前の冬、会社のエアコンが壊れたときのことだ。エアコンというものはやっかいなもので、一番必要な時、つまり、一番頑張って動いている時(暑い夏や寒い 冬)に壊れてしまう。この時もそうだった。部品が届く数日間、管理会社からはすぐに予備の暖房機が届いたが、それでも足元が寒い。というわけで、足元用に とりあえず安い電気ヒーターを買うことにした。
会社(三軒茶屋)近くのピカソ(ドンキホーテ姉妹店)で見ると2,000 円の電気ヒーターがあった。これで十分に事足りると思い、他の買い物の帰りに買おうと駅近くの西友に出かけた。念のために、そこの電気品売り場もチェック してみると、ナント、同じ製品が1,500円で売っていた。わずか500円の差と言えるかもしれないが、%で言えば25%もの違いだ。
以前から、ドンキは商品に よってはそれほど安くないという漠然とした思いがあったが、その思いは確信になった。しかし、だからと言って、ドンキで買い物をしなくなったかと言うとそ うでもない。客にとって、ハイ・ロー型小売のメリットは得な買い物をした時の喜び、つまり、ショッピングの楽しさだ。ドンキにはそれがある。
一方で、今まであまり縁のなかった西友は本当に見直した。正直、この西友はつい2 年ほど前までは、品揃え、接客、陳列、どれをとってもひどかった。しかし、2年ほど前に改装後、ようやくウォルマート的になってきた。レジ待ちの行列の長 さは何とかして欲しいが、それ以外は◎をあげたい。結局、私の西友へのイメージを変えるのに、やはり、改装後、1年近くがかかっている。ハイ・ローを追求するか、エブリデー・ローを追及するか、中途半端は駄目ということだけは確実な気がする。
2010年10月第2号 一円を笑うものは・・・
男という 者は一円玉を持ち歩きたがらない。一方で、一円玉だけを貯金箱に集めて寄付するというのもいかにもしみったれている。というわけで、自宅の小銭入れにはつ ねに一円玉が貯まっていくことになる。貯まる一方の一円玉を見て、ある日、なるべく一円玉も持ち歩くように決心した。
先日、ある買い物をした時のこと。レジの端数が3 円のとき、ポケットの中に1円玉が2枚だけあった。結局、お釣りで、5円玉と2枚の一円玉をもらい、ポケットの中の一円玉が4枚に増えることになった。こ ういう事が2日連続で続いた次の日、コンビニでまた同じ事が起きた。私はつい「えっ。また、一円だけ足りないのか!」とポケットの一円玉を見ながらつぶや いた。しかし驚いたことに、それを聞いたコンビニの店員が「いいですよ。一円はおまけしておきます」と言ったのだ。
以来、私はもう一つの決心をする事にした。出勤前に、5 円玉1枚と1円玉4枚をつねにポケットに入れることにしたのだ。こうすれば、一円足りないとがっかりすることはなくなる。値段の端数が9円だったりする と、ヤッタという気分。その日は大吉である。私の密かなおみくじだ。ただし、効果抜群で、今や逆に一円玉不足になってしまった。
この話を若い人にしたところ、「いや、私はおサイフケータイなので、一円玉は貯まりません」とあっさり言われてしまった。・・・携帯までなら何とかついていけるのだが、“ケータイ”となると正直、世代間ギャップを感じてしまう。
大 きな世代間ギャップを感じながら会社の近くにあるピカソ(ドンキホーテの姉妹店)で買い物をしていると、そこはドンキ特有の旧世代的アナログ世界であり、 おサイフケータイは使用不可。ところが、レジ机には一円玉をたくさん入れた蓋のないビンが置いてあり、端数の支払いに自由にお使いくださいとある。・・・ 「一円に笑うものは一円に泣く」という言葉は、日本でも死語になってしまった。
2010年10月 将棋三段
先週、日本将棋連盟から三段の免状を頂いた。昨年末に将棋をやろうと思い立ち、今年末までに段位取得を目標としていたので、まずは目標達成である。
さ て、将棋の段位を取得するにはまず資格をとらねばならないが、今は、新聞や雑誌やネットなどで資格取得できるのでそれほど手間はかからない。取得に手間が かからなくなったということはレベル的にも取りやすくなったということだ。正直、私自身のことを言っても、いわゆる“三段”というイメージから受ける実力 ではありません。とはいっても、所詮、履歴書の趣味の欄で書く以外にはほとんど意味のない努力認定なので、もともと段位がどうのこうのということ自体に意 味はない。
資格を取得すれば、日本将棋連盟に費用を支払って免状申請することになる。最大の難関がここだ。つまり費用だ。初段の申請は31,500円、二段が42,000円、三段が52,500円である。この費用が高いか安いかは議論の分かれるところだが、三段の免状を申請するのに5万円以上支払うのは正直ちょっと考えてしまう。くりかえすが、自己満足以外の価値はないのですから。
届いた免状は上質の和紙に墨書きのもので、三つにたたんで木箱に納められていた。5 万支払ったのだから、どちらかと言えば木箱よりも額入りを欲しかったのだが、同封されていたのは額購入希望者の振込用紙だった。免状は横長の独自サイズな ので通常の額には入らない。加えて、期間特典ということで漆の箸2組が同封されていた。なかなか良さげなものだったが、よく見ると、上部に目立つ文字でそ れぞれ“名人”、“竜王”と入っている。うーん。いったいこれを誰が喜ぶのだろうか。いくら将棋好きの人でも困る代物である。少なくとも、名人や竜王が 入っていなければ喜んで使うのだが・・・。
何 万円も払って段位免状を申請した人は、将棋にそれなりの興味を持った人で、恐らくはこれから何冊も将棋の本や雑誌やソフトを購入し、ちょっと良い将棋の駒 を買い、あるいは、お金を出して対局を見に行くかもしれない人たちである。どうも将棋連盟はこの宝の山の存在を理解していないらしい。いろいろネットで見 ていると日本将棋連盟も経営改革論議が盛んらしいが、さもありなん。なにしろ、連盟役員の全員がプロの将棋指しで、経営に通じた人など一人もいないのだ。 当然といえば当然だが、マーケティング的に言えば実に勿体ない。
さて、送られてきた免状とこの箸を見て、正直なところ、5万円は高かったかなと思った。しかし、免状をよく見ると、米長連盟会長のほか、羽生名人と渡辺竜王の署名があるではないか。米長会長の署名はそれほどではないが、この二人の直筆署名を見てこの価格に妙に納得。日本将棋連盟にこの心理がお分かりだろうか。
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