過去のひと言
2010年9月 カマアイナ・レート
先月、妻とホノルルに行ってきた。休暇というよりも、国際結婚をして5 月からホノルルに移り住んでいる次女に会いに行くのが目的だった。一年ぶりの再会である。そうでもなければハワイに行くことなど考えなかっただろう。ハワ イは10数年ぶり二度目の訪問で、さほど馴染みのある場所ではない。訪問回数で行けば、ニューヨークの方がずっと多いし、西海岸の方がハワイよりは多い。 そもそもが、海外旅行といっても今までは仕事中心だったので、これも当然のことだ。
久しぶりのハワイは実に快適だった。前回の訪問は12 月だったため、単に暖かいとの印象だけだった。しかし、今回は日本全土が酷暑に見舞われている中での旅行である。ハワイの方が東京よりも温度が低く、その 上、乾燥しており、かつ、心地よい風がある。しかも、今回気づいたことだが、独特の潮の香りと感覚がある日本の海辺と比べ、ハワイの海辺にはそれがない。 海岸沿いにいながら、海を感じさせないさわやかな空気である。8月であるのに、ホテルの部屋ではずっとエアコンを切ったままだった。
今回はこれと言った予定なし ののんびり旅行だったが、娘の旦那の誕生日祝いをこめて、皆でコ・オリナにあるパラダイス・コーブに出かけた。オアフ島の中で私がもっとも気に入っている 観光スポットである。どういうわけか、日本のガイドブックでは余り紹介されておらず、実際に日本人観光者も非常に少ない。とてもアメリカンな観光スポット である。
現地で予約したのだが、入園料(食事・ショーつき、送迎なし)が確か70 ドル弱。しかし、ハワイ住民であれば、40ドル以下だ。しかも、ハワイ住民一人につき、他3人までにそのハワイ住民料金が適用される。つまり、「住んでい る人にはもちろん還元しますよ。できれば、お友達をたくさん連れてきてください」という料金設定である。私も知らなかったのだが、実は、ハワイにはカマア イナ・レートという地元住民割引制度があり、ゴルフ場、ホテル、レストラン、各種施設の利用料金がディスカウント料金で提供されている。物価高になりがちの観光地ではありがたい住民優遇制度だ。
しかし、なぜ日本ではこのよ うな仕組みがないのだろうか。正直な話し、東京に住んでいて高い住民税を払いながら、都民特別料金というものにも、世田谷区民料金というものにも、ついぞ お目にかかった事がない。自宅近くにある世田谷美術館は、東京都立砧公園の中に立つ、世田谷区立の美術館であり、名前にあるように“世田谷”への地域密着 を強調している。しかし、現実には、都民料金もなければ区民料金もない。税金を支払っている住民に感謝する気持ちも見えなければ、お友達や親戚を連れてき てくれという努力の気持ちも見えない。典型的なお役所仕事としか言いようがない。要は何も考えていないのだ。
今回、気候、風土、サービスすべてをとって、ハワイは世界の観光地だと感じた。沖縄も好きだが、やはりレベルが違う。とくに、観光で生きるというサービスへの意気込みと姿勢と住民への配慮に大きな違いを感じた。
2010年8月No.2 本当のサングラス
歳を取るにつれて眼の疲れがひどくなってきた。という わけで、先日、サングラスを新しく買い求めることにした。以前、このコラムでも解説したことのあるタレックスのサングラスだ。メーカーのタレックス光学工 業は大阪生まれの中堅企業で、サングラスなどに使用される偏光レンズの専門メーカーである。タレックスのサングラスと言えば知る人ぞ知る存在で、サングラ スの偏光レンズではその技術は世界一と言われている。自信に満ちたキャッチ・コピーは、“ほんとうのサングラスをかけたことがありますか?”である。
さて、このメーカーの売り方 には頑固一徹さが伺える。第一にタレックスはレンズの専門メーカーなのでフレームは取り扱っていない。フレームを売らないサングラスのレンズ・メーカーが 他にあるのかどうかは知らないが、レンズ一筋の精神は筋金入りだ。しかし購入は面倒くさい。基本的には、フレームを持ち込んでレンズを入れてもらうことに なるが、すべてのフレームに装着可能というわけではない。私の場合、昔から使用しているお気に入りのレイバンのレンズを入れ替えてもらおうと思ったが、球 面測定の結果、難しいとのことだった。そこで、結局、その眼鏡屋さんで新たにレイバンのサングラスを購入し、もったいないが、そのレイバンのレンズをタ レックスのものに入れ替えてもらうことにした。ただし、値段は、私の購入した度なしのタレックス・レンズが1万3千円程度。レンズ自体の値段は思っていたよりはるかにリーズナブルだった。
もう一つの頑固な売り方がタレックス認定プロショップ制度である。要はそこでしか買えないのだ。レンズのみを売るとなると、レンズとフレームの調整などい ろいろ難しい技術も必要だろうから、この制度自体に文句はない。しかし、あまりにもこのショップの数が少ない。東京23区内では、わずか8つの店舗でしかタレックスを買えない。私の故郷である福岡市ではわずか一店舗、福岡県全体を見ても、北九州市と行橋市を入れてわずか3店舗しかない。
私は考えた。経営コンサルタントとしてならば、おそらくはショップ数を2、 3倍に増やすことを提案するだろう。少なくとも、大手の百貨店くらいでは売ってもよいのではないだろうか。今の評判からすれば間違いなくそれくらいの市場 はあるだろうし、高齢化の現状からみれば市場が減る事は考えられない。ショップ網を拡大することにより、宣伝・広報、小売店教育などももっと効率化・標準 化できるはずだし、何より消費者が買いやすくなる。私をコンサルタントに雇えば、あっと言う間に売上げを倍にさせるくらいの自信はある。
しかし、一方で、こうも考え た。こういう頑固なへそ曲がりの会社が一社くらいあってもよいのではないか。結局のところ、“ほんとうのサングラス”を欲しいと思えば、レンズとフレーム を別物として考えるのは当然のことだ。レンズとフレームを一緒のものとして売っている現在のサングラス流通が問題を抱えているのであって、最後に生き残る のはもしかすると別売りのシステムの方なのかもしれない。また、結局のところ、“ほんとうのサングラス”を欲しいと思えば、23区内で8箇所も購入可能な場所があれば十分なのかもしれない。それくらいの面倒臭さをいとわない心の準備を消費者に求めるのはむしろ当然のことなのかもしれない。売上げを伸ばすことだけが、会社を大きくすることだけが経営ではない。
・・・で、タレックスはどうか?今まで、レイバンのサングラスで、屋外に居るときに、雑光というか、レンズ上の光のギラツキが時々気になっていたのだが、それがまったくない。本当にまったくない。掛け値なしに満足しております。
2010年8月 アップル晴れのち曇り
先日、iPadをべた褒めしたが、ちょっと早すぎたかもしれない。確かに、iPadを経験するにつれ、ビューワーとしての優れた機能と能力には驚かされる。ビューワー機器と割り切れば、やはりiPadは秀逸である。
しかし、iPad Wi-Fi型の無線LANのトラブルは何とかして欲しい。購入してほどなく、無線LANがiPad立ち上げ時に自動的につながらないというトラブルが続出 したのだ。しかも、これは私のiPadの問題であり、妻のiPadは問題なくつながっている。同じ環境で、同じ型のiPadなのに私の方だけに問題が出た のだ。これは深刻かもしれない。
システムのプロの知り合いに尋ねたところ、そのプロの持っているiPad (Wi-Fi)もまったく同様の状態で困りきっていると言う。ウェブを覗いてみると、無線LANが切れるというクレームや問い合わせがわんさかとある。い ろいろ予想される原因は挙げられているものの、アップルを含め、どれも決め手となる解決策は示されていない。要は真の原因がよく分からないらしいのだ。実 際、私の周りに、まったく問題がないという人も何人もいた。
考えた挙句、「B フレッツ光ルータ+安物の無線LANルータ」という無線環境を「Bフレッツ光ルータに専用LANカード」を差込み、LAN周りの機器を一体化させた上、セ キュリティをWEPからWAPに変更することにした。ここまでくれば、かなり王道的なLAN環境だと思う。しかし結果から言えば、逆にLAN接続の切断は 以前にもましてひどくなった。
この問題に直面している最中に、iPhone-4のアンテナ問題が大きな話題となった。iPadといい、iPhoneといい、アップルはアンテナ関係の技術に何か構造的な弱みがあるのではないかと勘ぐりたくなるような出来事の続出である。もう一言、素人の私にとっては、NTT光ルータの無線LANに関する説明書の分かりにくさといえば、今までに読んだ説明書の中でも最高ランクの分かりにくさであった。
結局、接続が切れないように無線LANの出力を強くするしかないという単純な結論に達し、NTT無線LANカードを返却し、バッファローの最高出力無線LANを新たに購入。ようやく問題が解決した。今年の夏は本当に暑い。
2010年7月書画カメラ
私は、企業向研修では“書画カメラ”を使うようにしている。紙を表に置いて、上からカメラで映写する機械だ。文書をその場で添削し、その様子をリアルタイムで参加 者の方に見ていただくためには欠かせない。厚い本や、台の上に載せた立体物も写せるので、使いようによっては実に便利な代物である。この書画カメラの過去 数年の技術進歩が実に激しく、とても興味深い。
つい数年前まで、書画カメラと言えば、原稿台や照明装置が一体化した、一台20 万円以上する大掛かりなものが中心だった。しかし、これでは値段が高すぎるだけでなく重過ぎてとても持ち運べない。そのうちに、そこそこ持ち運べる軽量型 が登場したが、まだカメラからの出力はS端子などを使うビデオ出力が中心で、解像度が今ひとつだった。詳しくは知らないが、当時、書画カメラで市場リー ダーだったのは恐らくはエルモ社(日本)で、どの企業に行っても登場する書画カメラは皆、エルモ社製だった。かなりの市場占有率を誇っていたに違いない。
約一年前、私の研修実施のためにわざわざ書画カメラを購入したというある米国系企業に出くわした。しかし、その書画カメラはエルモ社製ではなく、台湾のAverMedia 社製のものだった。担当者の話によると、出回っている書画カメラをつぶさに研究した結果、これがベストだったという。確かに、一段とポータブルで、カメラ 出力もRGB方式になっており、従来の大型機械が時代遅れのウスノロ恐竜に見えるほど素晴らしい解像度である。しかも価格は8万円台にまで下がっていた。
書画カメラは未だに企業ではポピュラーではなく、私の研修のためにわざわざレンタルしてくれる企業も多い。しかし、レンタル料だけで2、 3万円するという。これは申し訳ない、機は熟したと考え、私もポータブル型のものを購入することにした。昨年秋のことだ。価格・解像度・持ち運びやすの3 要素で、各社製品を検討した。検討はとても簡単だった。少なくともその時点では、三要素共にダントツでAverMedia(台湾製)の最新型がベストだっ たからだ。聞くところによると、内田洋行を販売代理店として学校向けに売り込んでいると言う。価格は6万円台にまでなっていた。
この重さ1 キロもない書画カメラは実によく活躍してくれている。私が昨年購入したものの中のベストバイだったかもしれない。ところが、先週の研修では、初めて、エプ ソン社製のポータブルタイプの書画カメラにお目にかかった。これもなかなかの解像度である。聞くところによると、価格は5万円台だという。いろいろの分野 で熾烈な技術革新競争が進行しており、そこには必ず日本以外のアジア企業が絡んでいる。
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