過去のひと言
2011年6月 見かけなくなった日本人?
先週一週間、米国アトランタに出張してきました。CPSI(Creative Problem Solving Institute、創造的問題解決学会)と呼ばれる集まり(会議兼研修会)に参加するためです。すでに今年で57回目、つまり57年目という歴史ある集 まりです。1970~80年代半ばの全盛期には800人程度の参加があったようですが、今は落ちついてきて、今回は300数十人の参加でした。
世界25ヶ 国から集まっており、4割以上が非米国人という国際色豊かな集まりです。参加国はCPS(創造的問題解決アプローチ)運動の広がりをそのまま反映してお り、CPSの盛んな中南米からは、メキシコ、チリ、ブラジル、パナマ、ペルーなどからかなりの人数が訪れていました。また、遠くナイジェリア(アフリカ) からも数人、ヨーロッパからは、フランス、ドイツ、イタリア、フィンランド、オランダ、イスラエルなどからかなりの人数の参加者でした。アジアからは、ト ルコから数名が参加していた他、シンガポール2人、韓国2人、そして、日本からは自費で参加した私一人だけ。ビザの関係があるのでしょう、中国の参加者は ゼロでした。
着く前は、もう一人くらい物 好きな日本人がいるのではないかと思っていたのですが、正直、「案の定」という感じでした。確かに、会議は月曜から金曜まで一週間フルですし、会議の中心 は少人数のワークショップ型研修会なので、多少の英語力は求められます。しかしそれにしても・・・。このような歴史ある国際会議であれば、ちょっと昔はこ うした状況は考えられませんでした。いったい、どうなったのでしょうか。
ちなみに、韓国から参加した二人(20 代の女性と30代の男性)はともにサムスン電子の方で、企業による派遣。新製品の提案に関わる仕事だと言っていました。また、シンガポール人二人は学校関 係者で小学校の教育プログラムにクリエイティビティ要素を入れたいという訴えが聞き入れられ、官費の派遣が認められたそうです。シンガポールからは、香港 経由、アトランタまで24時間かかったそうです。
この会議で行われたキーノート・スピーチの一つは、IBMグローバル・サービスが行った「2010年世界CEO調査」(60ヶ国、1500人の経営幹部への取材調査)に関するものでした。結論から言えば、今、経営者に共通する認識は、
- グローバル企業を取り巻く最大の課題は、急速に拡大する「複雑性」への対応であること
- グローバル・レベルの複雑性に、現時点では、自分の組織が上手く対応できていないこと
- この対応として、リーダーに求められる最も重要な資質はクリエイティビティであること
日本の政治がだめなのは身に沁みて分かりましたが、企業のほうは大丈夫なのでしょうか。
2011年6月 政治問題に一定のメドはつくのか?
一週間前のことがもう随分と昔の話に思えるような変化の早さだ。世界経済の話しではなく、日本のビジネス環境の話でもなく、政治家のしゃべる内容のことだ。
それにしても、先日の民主党代議士会の様子にはぶったまげてしまった。正直、最 近は、政治番組など見る気もなくなってしまったが、当日は何となく中継を見ていた。「原発問題に一定のメドがついたら辞めます」という菅総理のあいまい言 葉には驚いたが、更に驚いたのは、鳩山前総理が先頭を切って発言し、「昨日、二人で密約しましたので、皆、承認するように」的な発言をしたことだ。 えーっ、鳩山さんは何を目的にしてこんな事をしゃべったのだろうか。もしかすると、菅総理が決断したのは小沢さんの圧力ではなく、自分の説得によるものだ ということをアピールしたかったのだろうか。でも、どう見てもこれは国民に隠れた密約でしょう。しかし、もっともっと驚いたのは、この発言の後、当然ある だろうと思った「一定のメド」に関する質問が一切出なかった事だ。
当日夜の政治解説者の話によると、「ああいう場で具体的な時期を明確にするもの ではないし、具体的な時期を聞くものでもない」というのが政治の世界の常識らしい。何と言う非常識な常識。常識とはいったい何なのだろうか?常識とは、今 の状態を維持しようとする仲間内の決め事でしょう。しかし、今必要なのは、常識を超えた決断であり、行動ではないのだろうか。
結局、おそらく性格的に、腹の中に納めておくことの出来ない菅総理はつい口を滑 らし、「冷温停止のメドがついたら」と言ってしまう。こんなにぺらぺらしゃべっていたら、民間企業の社長すら務まらないと思うのだが・・・。しかし今度 は、それに激怒した鳩山前総理が「菅総理はペテン師だ」と発言。「ペテン師」という昭和の香りがする言葉自体に驚いたが、もちろん国民は皆、総理を辞めた ら政治から引退すると言った鳩山前首相のペテンは忘れてはいない。そもそも、総理まで務めた人が「だまされた」とテレビに訴える姿は見るに耐えない。
もうすでに、この2~3年の政治状況を見て、自民党が第一党になろうが、民主党が第一党になろうが、ねじれ国会がある限り、法案がいっこうに成立しないことは明ら か。だとすれば、議院内閣制を前提とする限り、選択肢は二つ・・・ねじれ国会になっても重要法案が通るようなシステムにするか、ねじれ国会にならないシス テムにするしかない。言ってしまえば、前者は参議院の権限の縮小であり、後者は参議院の廃止である。ぜひ大連立を組んで、まずこの辺を解決してもらいた い。
でも、どうせ駄目だろうから、私としては一生懸命、ロト6を買い続け、当たればすぐに米国に投資して、米国の永住権を取得しようかと思っています。・・・恐ろしい事に、こちらの方が確率が高そうに見えてきた。
2011年5月第2回 軽くなった経団連会長の椅子
3月16日、A氏は東京都内で記者団に対し、福島第1原発の事故について「千年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」と述べ、国と東京電力を擁護した。
4月6日、A氏は、米紙WSJ紙との単独取材にて、「(東電が)甘かったということは絶対にない。要するにあれは国の安全基準というのがあって、それに基づき設計されているはずだ。恐らく、それよりも何十倍の安全ファクターを入れてやっている。東電は全然、甘くはない」と語った。
4月11日、A氏は、東 京電力の対応について「東電には頭が下がる。甘かったのは東電ではなく、国が設定した安全基準の方だ」と述べた。その上で、事故自体については「峠は越し つつある」との認識を示した。損害賠償などによって東電の経営不安説が流れていることに関しては「天災であり、国が支援するのは当然のこと」と語った。国 有化論については「全然ありえない。一部の政治家が口にしたせいでどれだけ東電の株価が下落したか」と非難した。
5月9日、A氏は、首相が中部電力に浜岡原発の全面停止を要請したことについて、記者会見で、「電力不足の中で菅首相がただ30 年間で87%の確率で東海大地震が起こる可能性を根拠にして停止を要請したことは唐突感が否めない」と語った。「結論だけがぽろっと出てきて、思考の過程 がまったくのブラックボックスになっている。・・・」と厳しい口調で、要請に至る経緯が説明不足であるとの認識を示した。
A 氏とは一年前に経団連会長に就任した米倉氏。大方の予想を裏切り、上がりポストといわれる経団連評議員会議長から異例の抜擢となった方である。「何で今 更、財閥系の、それほど大企業とも言えないところから、しかも73歳の高齢の方が?」と当時、さまざまな憶測を呼んだ人事だ。ちなみに、東京電力清水社長 は、経団連副会長の一人である。
正直、私も菅さんのリーダーシップ(国・行政をリードする能力)にはがっかりしている。しかしそれでも、東電に根強く存在する恐らくは想像を絶するデータ隠し/ 責任逃れの体質や、更には、防災対策軽視のまま原発推進を進めてきた自民党族議員/官僚の無責任体質には、心から共感・同情する。また、早朝、東電本社へ 乗り込んでの「覚悟を決めろ」発言や今回の浜岡原発停止要請など、心から応援したいと思う点も幾つかある。しかし、正直、この経団連会長の度重なる発言に は、評すべき言葉すら見つからない。 鳩山首の時もそう感じたが、なぜこんな人が組織のトップに選ばれるのだろうか。失望というよりも不思議でたまらない。
2011年5月“入門 考える技術・書く技術”
今回は、私の本の宣伝です。
プロフェッショナル・レポートライティングの世界では、私が日本に紹介し、自身で翻訳した“新版 考える技術・書く技術”(ダイヤモンド社、著者:バーバラ・ミント)が有名です。この本は、すでに世界10数ヶ国語で翻訳され、文字通り世界中のすべての一流経営コンサルティング会社や調査会社でレポートライティングの基本書として採用されています。経営コンサルタントの実務を経験した人でこの本の存在を知らない人は一人も居ないはずです。
しかし、例えば、日本の一流大学を卒業し、一流のビジネススクールで経営学修士を取得し、これからプロのコンサルタントとして活躍しようとする人たちのための教科書なので、内容的にはかなりハードです。日本ではすでに30万部を越すロング・ベストセラーとなっていますが、積読状態にある人も多いかもしれません。
さて、その“新版 考える技術・書く技術”に入門編が誕生しました。先月、ダイヤモンド社より出版された小著“入門 考える技術・書く技術”です。以前から、“考える技術・書く技術”のもっと易しいバージョンが欲しいという要望があったのですが、ようやくその要望にこたえる事が出来ました。旧版オリジナルの“考える技術・書く技術”の日本語訳出版では出版社探しに大変苦労しましたが、今回は内容面で予想以上の苦労でした。
実は、企画時点では、私が普段、研修などでやっていることをそのまま本に置き換えればよいだろうとたかをくくっていたのです。実際には、ダイヤモンド社の編集部と企画を話したのが昨年の7月、出版が今年の4 月初めなので、何と10ヶ月近くかかっています。わずか170ページ足らずの本に10ヶ月近くというのは尋常ではありません。実は、本書は、一度書き上げ た原稿をほとんど書き直ししました。200数十ページ近く行くと思われた原稿を約半分程度にばっさりと切り落とした上で、事例を大幅に増やしました。ぱっ と目にはそうは見えませんが、実際にはかなりの労作です。おかげさまで、そこそこの評判を得、発行4日目にして増刷が決定。現在、電子版の話しも進行中で す。ご興味のある方はぜひご一読ください。
これにて、“新版 考える技術・書く技術”、“考える技術・書く技術ワークブック”、“入門 考える技術・書く技術”と三部作が出揃いました。一つだけ、肩の荷が下りた気もします。
2011年4月米国にて
4 月4日から一週間、米国バッファローに出張してきました。ある研修に生徒として参加するためです。今回は、火曜から木曜まで、朝8時から夕方6時までのフ ル3日間です。この間、米国人以外は私一人。久しぶりに、緊張感ある、厳しくもエキサイティングな環境に身をおいてきました。私は、時々、米国で開催され るおもしろそうな研修や会議に参加するようにしています。もちろん研修内容そのものも出張の目的ですが、他にもいろいろ副次的な目的があります。
先ず、米国の研修は実に効率的に運営されているので、商売柄、その運営方法が実に参考になります。また、意識的に生徒として参加することにより、改めて、生徒としての立場を再認識する事が出来ます。歳をとると、人にものを習うという機会が減るので、これは大切です。
しかし何と言っても、最大の 収穫は変化の波を肌で感じることが出来ることでしょう。米国の先端テーマの研修に参加し、他の参加者などと意見交換していると、米国企業がどのような状況 に直面し、どのように動いているのかが実感できます。実際には日本の状況もほとんど同じなのですが、日本で実務にまぎれているとなかなかこういう経験が得 られません。やはり、仕事から離れ、いったん外に出て、違う空気を吸ってみないことには季節の変化には気づきがたいものです。
さて、時差ぼけで夜眠れないときは、テレビをつけっぱなしにしているわけですが、今でも、一日に1 回は日本の地震報道がありました。ただし、東地区ではその程度の報道です。日本で思うほど頻繁な報道ではありません。とは言え、内容は強烈です。テレビを 見、現地の新聞を読んでいる限りでは、原子炉爆発の危険がすぐにでも差し迫っているような感じです。日本でおなじみになっている「差し迫って危険な状況に あるとは認識していません」という原発関係者の発表と比べると雲泥の差です。
危機を煽るような大げさな米国の報道と、隠そうとする意図が見え見えの日本の発表とどちらが真実に近いのか。おそらく真実はその中間にあるのでしょう。た だ大切な事は、外から見るのと、中から見るのでは、見え方がかなり違うということです。そして、中からの視点はつねに現実(真実)に対して鈍感であるとい うことです。昔は、商社マンと言えば憧れの職業、一度は海外で生活をという海外志向が高かったのですが、今はそういう若者も減ってきたようです。現代の内 向き志向と日本の鈍感化には、どうも比例関係があるように思えてなりません。
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